9.17『描く!』マンガ展 観に行った。2016年09月19日 07時12分21秒

9月17日(土)は『描く!』マンガ展観に行きました。
(ファン丸出しな文章なので敬称略にします。すみません)

早く行って早く帰ろうと午前中から移動したつもりが、なんだかんだと昼飯食べてからの入館になってしまい、中に入ったのが結局午後1時過ぎくらいからでしたが、4時半くらいまでガッツリ3時間、見入ってしまいました。
そんなにかかるなら逆に昼飯食ってから入ってよかった。
それくらい、見る価値、行く価値のある展覧会でしたよ。
入館料800円。映画に行くより安い!
しかも第1章(手塚・石ノ森系エリア)以外は全て写真撮影可。
私は調子に乗って100枚くらい撮ってしまいましたよ。
買ったばかりの携帯タブレット端末で。
(後で気付いたらバッテリーってこんなに簡単に減るのか!とビックリ。皆が補助バッテリー持ち歩く理由がわかりました)
でもテクが無いため暗い展示室内での撮影では、そのほとんどがピンボケでしたよ。とほほ(笑)。

個人的に第1章での一番の見どころは肉筆回覧誌『墨汁一滴』の(一部分のみの)複製見本!
石森キッズの自分としては石ノ森原画が多数あれば感想もまた違っただろうけど、とにもかくにも『墨汁一滴』の片鱗が見れただけでも感涙!!
ああ……これが伝説の……肉筆回覧誌……
ぶっちゃけ展示自体は目次とか自己紹介とかの数枚しかなくて、大したページは無かったのだけど(掲載漫画作品となると、その作家さんの了解得なければならないだろうし、もう了解取れない人も多数いる居るだろうし(泣))、その目次とかも手書きなわけで、一文字一文字レタリングするわけですよ。てか、してるんですよ。スゴイなぁ。
「手元に届いたら3日で次の人に回しましょう」というルールの明記文とかも直に読めたし、肉筆回覧誌のメンバーにほんの少しだけなれた気分が味わえました。
入場して歩いてたった10歩目なのにもうお腹いっぱいです!(笑)
手塚・石ノ森・水野・藤子・赤塚のエリアは展示数は少なかったけど、すげー古い価値のある原稿ばかりだったので(「U・マイア」の原稿とか)感想書き始めると3年かかっても書き終わらないので省略。……てか、省略しても既にこの行数。

第1章を過ぎると第2章。
まず、さいとう・たかをエリア。
とにかく上手い。
あんなに細かく描き込んでるのに、修正のホワイトがほとんど入ってないページとか、ザラ。
その分、立体表現としてのホワイトの入れ方がまた正確なこと。
竹宮恵子エリアは『風と木の詩』のひとつ見開きのクロッキー画と原稿と見本誌が同時に見れるように展示されてたのが、とても良かった。
「'原画(げんがダッシュ)」は理念はわかるし、重要で大事なこととだと思う。
ただ、『地球(テラ)へ』のポスターイラストは、原画が見たかったなぁ。
「'原画(げんがダッシュ)」とその「原画」を横に並べれば、その意味と意義、さらにはその限界も見て取れる比較になったのに(←ただ原画が見たかっただけの人)。
このマンガ展に来て良かったと思えたのは、陸奥A子エリア。
竹宮恵子もそうだけど、陸奥A子の原画展ってあっても見に行こうとまず思わないですから。
(好きとか嫌いとかでは無く、単なる興味の問題で。てか、ほとんど陸奥A子を通って来てないし、私)
あの当時の少女マンガのふわっとした描線(タッチ)を生で見れて良かったです。
あと、展示物の中に当時の陸奥A子が参加した同人誌があり、その中でばばよしあき氏はじめ作画グループの面々とお会いした感想(みなもと太郎や聖悠紀の)が描かれていて感慨深いものが。

諸星大二郎のコーナーになるとこっちも観覧の仕方に余裕が出て来たせいか、原画の描線だけでなく「ふきだし」の「写植」にも気になり出したり。
(「フォント」では無く「写真植字」のことね)
昔はこうやって、ペーパーセメント使って手貼りしてたんですよ。
(ふきだしの文字ばかりが1枚の印画紙にバーって打たれたものが、写植屋から届くので、それを必要な部分だけ切り取って原稿に貼り付けるのですよ)
「茸を採りに行く者~」のコマは、手元に来た写植の印画紙と誌面に貼り付けようとした文字組が違ったのか、かなりバラバラに切り離されていて、予想ですが改行の文字送りをしなおしています。
そのため「手を“挙”げて~」の行が直線上ではなく文字位置が左右にバラついてしまってますね。
当時の版下屋はそーゆーのが気になるんですよ(笑)。
や、私はデザインレイアウト…版下屋や製版屋に作成してしてもらう設計図を作る側…を専門にしてたので版下屋ではないのですが、一部(表紙とかは)版下作業もしてたので。
それに対し「そのかわり あんたの隣の~」のコマの「調査にきた」の文字はそこだけを切り取って下にずらしてるので、その行の文字の中心線がズレずにキレイです。
ただ、ふきだし内全体で見ると問題があって、本来ルビ入り行間は2分アキ、ルビ無し行間は4分アキの行間ルールで打たれていたものが、表記の統一からか元々は打たれていたであろう「東京」の「とうきょう」のルビを(切り取って)削除したことで、その行間ルールが壊れてしまっているんですよね。
なので「そのかわり あんたの隣の」と「家に やっぱり 東京から」の行間は本来4分アキに手ヅメしなきゃならないのです。
(この辺りは磯貝さんとツイッターで話題にしました)
指摘が細かすぎですかね?(笑)
印刷されると意外に気付かないのですが、こうして生で写植が貼られているのを見ると、写植の貼り方の上手い下手ってすごくわかって面白いですよ。
ちょっとワクワクします。
見方が偏り過ぎですか?(笑)



合間のケース展示に『ふぁんろーど』の創刊号(当時買った!)や『月刊OUT』(もちろん読んでた!)に混じって只野電次郎こと加藤礼次朗先生(ここだけ敬称アリかよ)が表紙を描く『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』が!
歴史の一員ですよ。流石は我が次郎兄さん!!

そして島本和彦のコーナー!
デビュー作からのファンなので『炎の転校生』の原画見れて眼福!!
ツイッターでは藤田和日郎のホワイト厚塗りに何だかんだ言ってたけど、自分も口の表情を丸々塗り潰して描き直してたりするじゃんよ(笑)。(←責めてません。褒めてます)
それとは別に『燃えよペン』の「アシ描き込んだ見開きに炎がホワイト吹きつけを失敗するネタ」ページのホワイトの厚さと言ったらそれはもうスゴイものが!!
これは生原稿で見ないと伝わらない!!
そしてリアルであそこまで失敗していても、印刷だと「意外とそんなもんかー」な刷り上がりになっちゃうんですよね。
原稿見て「ああっ! これは失敗してる!!」と本当に思えました。
さらには「あえて……寝るっ!!!」の生原も見れて超幸せ。
また、『アオイホノオ』の内容に合わせた焔くん(島本本人)の大学時代の作品展示もあり、いいのか?(笑)
個人的な見どころ的には『炎転』原稿のトレペ(トレーシンペーパー)のかけ方かな。
絵にかぶって白フチ付けたい写植はこうやって原稿にトレペをかけた上に写植を貼るんですが、トレペ、全面にかけなくていいんだー。とか思ったり……って、書きながら思い出したけど、部分トレペしてましたね。私も(笑)。
その代わり部分トレペは厚手のものを使ってヨレたりしないようにしてました。
この原稿のトレペは薄いロールトレペ使ってるみたいだけど、大丈夫だったみたいですね。

次が平野耕太のコーナー!!
ぶっちゃけ、このマンガ展の目当ては島本和彦と平野耕太で行きました。
が。マンガ展自体のコンセプトはさて置き。
単純に絵画展として観た時、圧倒されるくらいにその存在感が違ったのが、平野耕太。
いやー、スゴイです。
ほんと、平野耕太の生原稿観れてよかったー!!!
このコーナーだけでホントもう行った価値あります。
私は平野耕太の原稿、全部写真に撮ってしまいましたよ!!
(半分以上ピンボケでしたが(笑))
とにかく、印刷には出ない何かがソコにあります。
そして原稿が美麗。
説得力が違うので解説不要。とにかく観てください。
それが全て。
個人的に「あー、それすごくわかるんだよなー」ってトコが、この炎のね、先端の1本1本がね、ちゃんときれいに全てが尖っているんですよ。
でもこんな先端全てをキレイにとがらせようとしたらスゲー死ぬほど時間かかるんですよ。
普通手癖でシャッシャ描いちゃってもいいような部分なんですよ。
でもソコは尖ってないとダメなんですよ。
尖ってなきゃ死ぬんですよ。
誰がですか? オレがですか?
やっぱ東京デザイナー学院卒だわ(←関係ありません(笑)。ちなみに私も東デ卒。科は違うけど)。

ぼちぼち終盤に差し掛かって、あずまきよひこのコーナー。
お仕事で本当にうっすーい蜘蛛の糸未満の繋がりですが、超間接的にお世話になっておりますです。
ぜひもっともっと活躍していていただいて、おこぼれのお仕事がどうぞ私のところまで回って来ますように(笑)。
で、この人はほんとめちゃくちゃ上手いです。
めちゃくちゃ上手いのに右利きなのでしょう、やっぱり、向かって右向きは不得手のようで、裏に同位置に左向きで先に描いて、透かして表面に右向きを描いてます。
最近はデータ作画になられているようなので、裏描き側にペン入れまでしてました。
(それをスキャンして表面と合成するみたい)
丁度『漫勉』の池上遼一がPCで左右反転してるのを見て「あんなに上手い人も!?」みたいな衝撃を受けた人が居るようですが(私は録画したけどまだ観てない)まんまソレです!
いいんだぁーー。
裏に左向き描いて透かして右向きにしてもいいんだぁーーーー!!!

第2章のトリはPEACH-PIT。
この方ともお仕事で間接的にお世話になりました。
一度『DearS』の無料配布本のデザインのお仕事をさせていただいたことがあります。
の割には二人のユニット作家だと初めて知ってびっくり。
PEACH-PITはデジタル導入も早いようで、特にカラー原稿は出力物が多かったです。
その美麗なタッチには幻想的演出を得意とするデジタル作画が合い、相乗効果を生んでいました。

第3章はマンガのアナログツールやデジタルツールを展示してましたが、実際触れる液タブなんかは1台くらいしかなく、先に人が使ってると触れなかったので流して通過。
マンガの描きかた本の展示があって、
「なぜ少年サンデーの『まんがカレッジ』も石森章太郎の『マンガ研究会』も無いのか!」とツッコミ。

ちなみにここに写ってるデビルマンが表紙絵の『ワイド版 マンガのかきかた』は名書ですよ!

全体の感想としては、ホントにとても良い展覧会でした!
合間合間に田中圭一の解説が入るのが、観覧の句読点にもなって良かったです。
これは良い演出でした。
解説もわかりやすかった!

ただ、ひとつだけ。デジタル原画に関して。
「'原画(げんがダッシュ)」のところでも少し触れたけど「古い原稿をデジタルデータとして残す」は意義のあることなので、それは置いといて。
原画展を観に来て、生原稿には本当に凄く感動があるのだけど、出力されたデータから受ける感動って、薄いんですよね。
正直、もしデータ出力画だけの展覧会だったら、あまり観る意味はないかな。と思いました。
ただ、自分も仕事しててわかるけど最近のマンガってデジタル作画がむしろ主流になってるんですよね。
下書きからデジタルの人だと生原稿はまったく存在しないんですよ。
(私の仕事的には生原稿をスキャンしたものが来るとゴミ取りとかキリヌキとかでむしろ「チッ、めんどくせー」とか思ったり(笑))。
なので今後の話、現在デジタルデータで描かれてる作品の原画展って、どうなって行くんでしょうね?
個人的には、複製原画の購入にはお金を出せるかも知れないけど、複製原画の鑑賞にはお金を払えないと思うので、無料ギャラリーに出展して複製原画の売上げで成り立つようなシステムになるのでしょうか?
やはり原画展には生の肉厚(ペンタッチのインクの盛り上がりであったり、ホワイトの厚みであったり)が必要だと思うんですよね。
人は、その人の目に見える努力に感動すると思うので。
デジタルデータは印刷出力になってしまうので、どうしても印象が客観的になってしまうんですよ。
(そして頭をよぎったのが生原稿の保存の仕方も「'原画(げんがダッシュ)」どころか、ペンタッチの肉厚までスキャンした「3D原画」にするべきで、出力は3Dプリンタにする必要が出てくるのではないだろうか?……とか?)


最後に蛇足ですが、
島本和彦と平野耕太の感想ノートにマーキングしてきましたよ。

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