ゲッターロボ飛焔2008年03月02日 19時50分17秒

先日、本屋に並んでいたので『ゲッターロボ飛焔(ひえん)』というコミックスをつい買ってみた。
原作は永井豪・石川賢となっていたが、漫画は津島直人。
石川賢没後に書かれているから、シナリオは多分漫画家の津島氏が手掛けているのであろう。
ただ、produced byダイナミックプロダクションとあるので、もしかしたらダイナミックプロもシナリオにタッチしてるのかも知れないが。

とりあえず『ゲッターロボ』と銘打ってる作品なので、感想は手厳しく行きます(笑)。
と、書き始めたらすんげー長くなってしまいました。
1週間くらいかかって書いてますよ。この文章。

先ず、本を手にとってみての感想。
タイトルのロゴタイプにゲッターへの愛が感じられない。
(おいおい、そんなトコからツッコムんですか?(笑))
ゲッターのロゴは文字エレメントの右端がトンがっててナンボだろーがよう!!
違う。このロゴタイプにはゲッターの息吹が無い!!(笑)

ロボのデザインセンスやキャラクターのタッチに関しては漫画家さんの個性だと思うので、とりわけ言及はしません。
好みダケを言うなら、「オレの好みとは違います」。

とか、この本について何で感想を書こうと思ったかと言うと、理由が「どうやらこのマンガは石川漫画版『ゲッターロボ號』と『ゲッターロボアーク』のストーリーの間に位置する物語のように見え、尚且つダイナミックプロがプロデュースしてる分だけ、オフィシャル色の高い物」であるから。
(「〜のように見え」とは、おっさんな隼人が早乙女研の所長な上、敷島博士が『アーク』の時みたく早乙女研の防衛システムにダイレクト脳リンクしてたりするから。まぁ、漫画版に対してのOVA版みたいなパラレル物な可能性もありますが。情報入れて無いので漫画の内容のみで判断してます。
あ、OVA『真対ネオ』の世界観の後日。って考え方もあるな。)
とはいえ、ダイナミックプロオフィシャルだろーがなんだろーが、オレにとっての漫画版ゲッターは石川賢が描いたモノこそ本物で、石川氏以外が描いた物は例えソレが永井豪が描いた物であっても偽物でしかないのです。オレにとっては!
なので、この『飛焔』というマンガ、オレにとってはまぁどーでもいいです(笑)。
基本、興味の対象外。(だったら買うなよ)

かといって、だからその手のモノを全否定するのかと言われるかとそんな事も無く、面白かったり凄いと思わせてくれる作品ならばソレはソレでちゃんと評価はする人間なので、ゲッターアンソロジー系でも認めている物はあったりはするんですよ。
長谷川裕一のとか富士原昌幸のとか結構好きです。
『ゲッターロボ大決戦!コミック』に収録されてる山下博行のとかなんか、独特過ぎる切り口に感嘆したりしてますし。

と、何をグチグチと言い訳めいた事を書き連ねてしまうかと言うとですね。
どーもイマイチ感を受けてしまうのですよ、この『飛焔』。
どこがと言えばただ一点、「目線が低い」所。
(「目線が低い」とは、作品を作る上での「志の高さ」の話を言っていますね。)
特に出だしのエピソードが読んでてイラっと来ました。
何で引用ばっかり使っちゃうんだろうか?

冒頭、ゲッター1号機パイロットが使えない自衛官ってのは、明らかに『ゲッター號』の冒頭シーンからのパクリだし、落ちて来た1号機に、死んだパイロットの替わりに主人公(竜牙 剣)が乗り込むというシークエンスは『ゲッターアーク』の拓馬がゲッターD2に乗り込むシーンを彷彿とさせる。
ソレってどうよ? って思えません?
敢えてパクリという言葉を使ってますが、そう読者に思わせたら、作者として負けなんじゃないのかなぁ。
ニュアンスは引用してもいいけどシーンを引用しちゃダメだろ。
そんな風に安易に持って来てしまっては石川版を越える物なんて、天と地がひっくり返っても描けるワケ無いいと思うんですが。
作家さんはそんな目線で作品作ってて満足なんですかね?
どーせやるなら石川版を越えるゲッターを描くつもりでやればいいのに。
そんな風な歯痒さを覚えて仕方無いんですよ。
「ほら、ちゃんと石川ゲッターのシーン、押さえているでしょ。読者のみんな、喜んでください」じゃ、その目線の低さを読者に見透かされてしまいません?
オレの感想、穿ち過ぎですかね?

主人公が石川版竜馬みたいにムチャクチャな乱暴者キャラにしたくて、強引に奪うように1号機に乗り込むっていう展開で行きたいなら、主人公の竜牙に早乙女研を占拠させるとか、違う描きよう(演出方法)がいくらでもあると思うんですよ。例えば……

●パニックのあまり1機だけ離脱・墜落してしまう自衛官搭乗の1号機。
●墜落した廃虚の街で倒れている竜牙(実は腹が減って倒れているだけ)を見つけ、保護の名目で、2・3号機を戦場に残し1機だけ尻尾巻いて早乙女研に帰還してしまうヘタレ自衛官1号機。
●意識を取り戻し、メシをたらふく食わせてもらった竜牙、研究所内で調達した爆発物を仕掛けたりテロそのもののやり方で研究所をあっという間に占拠。
その目的は「ゲッターに乗せろ」
●竜牙に背後を取られ銃をつきつけられる隼人所長。「ニヤリ」とほくそ笑みながら、「そんなに乗りたいか?」
●竜牙に銃をつきつけられたままゲットマシン格納庫に案内させられる隼人。
「おう、コレだコレ!」
ゲットマシンを目にして喜ぶ竜牙の銃をあっさり奪い、逆に銃を突き付け返す隼人。
「そんなに乗りたいなら、力づくでも乗って見せるんだな」とニヤリ。
●竜牙の前に立ち塞がる1号機の自衛官。戦闘時のパニックで目がイッてる。
●あっさり自衛官をノし(や、殺す一歩手前レベルまで痛めつけますよ。そりゃ(笑))、1号機のコクピットに座る竜牙。
●「神所長。そんな素人にゲッターパイロットが務まるとは思えません。足手まといです」と2・3号機パイロット。
(こいつらはまだそのまま戦っていた。航続時間とかの設定関係次第でもあるが)
「その程度で戦え無くなるなのか? お前達は。 いやならそのコクピットから降りろ」神はいつもの傍若無人さで、そんな文句を受け付けない(笑)。
●神、コッピットに座る竜牙の胸倉を掴み、言う
「竜牙、現場まではオートパイロットで送り届けてやる。
それだけ大口を叩いたんだ。後は自分でやってみせろ」
「話せるじゃねーか、所長さんよ!」
「お前の死体が形を残して帰って来るなら、葬式くらいは出してやるから安心しろ」
「上等ォ!」
1号機が早乙女研から射出される!!

とかさ。
引用ばかりを単に使いまくるんじゃなくて、韻を踏んでいながらオリジナルな展開。ってな風にお話を紡いだ方が、燃えません?

なのになぜ、安易に引用で済ませちゃうのかなぁ?

なんつーか、「記号化された石川賢要素」で展開してるというか、そんな印象を受けてしまいます。
「熱血」を記号化させてしまったスパロボ世代の悪しき慣習というか。
この作品に限らず、そういうの多いですよね。
記号化された要素を詰め込むだけの作劇をしないで、ニュアンスだけを取り込んだ上での、自分のオリジナルな部分をもっと出した方がいいと思うんですが。
そこの部分を、仮に読者からこんな風に文句を言われても(笑)、「別にオレは石川ゲッターの劣化コピーを描いてるワケじゃねぇ!」と言い返せるじゃないですか。
記号論ばかりで描かれていると、はっきり言ってコッチの魂に「グッと来ない」んですよ!


えー、すみません。
とか言った感じでこの『飛焔』をかなりケチョンケチョンに言ってますが、コレがオフィシャル作品で無かったり、作品の作劇目線が元々「学年誌くらいの読者層を狙っているんだ」とかだったりするのなら、まぁ、ソコまで言う必要ははっきり言ってありません。
いや、学年誌どころか石川版『ゲッターG』が連載していた『冒険王』辺りに載ってたとしても、「普通に面白い巨大ロボットアクション漫画」としては充分以上に読める作品です。
ソコは認めた上での、どーせなら本家石川版に負けないくらいの作品を描いて欲しい。というゲッター好きとしての「欲」みたいなモンですから。
エールみたいなモノとして受け止めていただけると幸い。
やっぱりどーしても、オレが石川版『ゲッター』を好き過ぎなんで、「違うモノ」に関して歯痒さを感じてしまうのは致し方ないのですね。
この文章を読む上で、そこら辺、御了承いただければと。
この文を読んで「コイツは何を言ってるんだ!?」と思ったならば、是非『ゲッターロボ飛焔』を手に取ってみてあげてください。
そして読んだコトが無いのなら、石川賢版『ゲッターロボ』サーガもついでにどうぞ(笑)。

仮面ライダーV3のVって2008年03月15日 03時55分14秒

今さらながらにふと思ったんだけど。
仮面ライダーV3の「V」って、もしかして
「Version」の「V」なのだろうか?
1号、2号と来て「仮面ライダーVersion 3」だと、座りがイイもんなぁ。

幼心に「Victory」の「V」と思い込んでいたもので。
どうなんだろうか?

「『Victory』の『V』だよ!」(by島本和彦/ちなみに「『ST』は、『サンタ』の『ST』だよ!」)

映画『DEVILMAN』2008年03月16日 08時42分02秒

2004年に公開された、実写映画の『DEVILMAN』をようやく観ました♪(←笑)

※先に書いときますが、私が『DEVILMAN』と書いた時はこの「実写映画『DEVILMAN』のみ」を指します。
(「さします」って文字を変換しようとして「刺します」と変換された時に、思わずそのままENTERキーを押したくなっちゃいました♪(笑))

私、新聞も取ってないしTV番組雑誌も買って無いので、普段、テレビの番組表って見ないんですよ。
テレビって、点けた時にやってるヤツをザッピングしながら観てるダケなのね。
だからいつ何がやってるのかって、ほとんど知らなかったりするんですよ。
特に映画とか、非レギュラーで放送される物とかまったく。
なのにタマタマ、人に「『タモリ倶楽部』が「空耳アワード」の後編をやるから録画しといて」と言われてて、尚且つ自分も仕事で「空耳アワード」を観れそうも無かったので「何時からやるんだろう?」とネットのテレビ番組サイトを覗いてみたトコロ、テレビ朝日でその数時間後の深夜1時50分から『DEVILMAN』の文字があるじゃないですか!!
コレはもう神の啓示!! とばかりに、喜び勇んで録画しましたよ!!(笑)
ほとんど奇跡に近いです。奇跡って起こるんだなぁ。
神様って、信じてればちゃんとそういう事を囁きかけてくれるんですね。
いや〜、ホントコレ観たかったんですよ〜
「絶対に一文も払わずに、タダで観れる地上波で!」(笑)
曰く、「ビデオレンタル料金すら払いたくねー!!」

永井豪のマンガ『デビルマン』はそりゃもう名作中の名作で、
「あなたのの人生において一番衝撃を受けた作品は何か?」と問われれば
「映画・絵画・小説・演劇・音楽、その他人間が作り得る『作品』と呼べる全ての物の中で、一番衝撃を受けた作品は永井豪のマンガ『デビルマン』(但し、初期刊行時のKCコミック版での編集スタイルが前提)」と、今でも言い切れる作品なのですよ!
(私が一番好きな作家は石川賢なのだが、一番影響を受けた作品は実は『デビルマン』なのですね、コレが。あ。その『デビルマン』もTVアニメじゃ無くてマンガの方ね。)
ハンパじゃ無いくらい、凄い作品なんですよ。マンガの『デビルマン』は。

ソレが映画化されるっ! ってんで、『DEVILMAN』の制作決定を目にした時は多少は心も踊ったモノです。
が、出てくる制作情報を耳にすればするほど、なんだか「コレは……ダメかも……」と思い始め、テレビで流れた番宣ビデオでボブ・サップがデーモンに変身するシーンを見た時に、「コレは……ダメだ……」と見放しました(笑)。
んで、劇場公開が始まるとコレがまた想像通りの悪評の嵐!!
「原作を冒涜している!」ならまだしも(まだしも!)「これは映画ですら無い!!」とまで言われる始末。
あー、観なくてヨカッタ。と胸を撫で下ろしたモノでした(笑)。

とは言え、やっぱどっかで観ておきたいじゃないですか。『デビルマン』好きとしては。
そして、ソコまで悪評が立つ映画って、どんなにヒドイんだろう?という逆の興味もあるし。
でも、初めから「最低」と言われているモノに、ビタ一文も金を払う気も起きず。
間違ってDVDなんか買ってしまった日には、どうしたモノかと(笑)。
というワケで、地上波放送を首をながーくして待っていたワケです。
ココに来て、ついに念願叶いましたよ。

さて、長々とのーがき書いてしまいましたが、お待ちかね、レビューです。

「最低でした」

終わり。

いやぁ、コレ凄いわ〜。
コレ、ホント、凄い最低ですね(笑)。
みんな『DEVILMAN』を映画『CASSHERN』と比べますが、私も『CASSHERN』を観といて(コレも地上波で観た(笑))ヨカッタです。
思いの他、耐性が付いてました(笑)。
コレ、金払って観てたら激怒してますね。
作品的に良かった探しをすれば、もうみんなが語り尽くしてるようにミーコとススムくんくらい。

と、言ってしまうように、レビューなんか私が書くまでも無いくらい、ネット上には同じ意見が溢れていますので、私の感想をちゃんと知りたいという方が居ましたら、「映画デビルマン」という検索ワードでGoogle使って検索してWikipediaに飛んでください。
一字一句同じ感想を持ちました。
(その際にGoogle上に出てくるWikipediaのリンクは上から二番目になります。先ずそちらをどうぞ。
ちなみに一番上は「映画デビルマンを徹底的に叩く!!」というサイトへのリンクになってます(笑)。
コレはWikiからでも飛べますので、お楽しみはソレから。というコトで)

で、実は映画自体より、そーやってネット上でこの映画の感想を探して読んでる方が、はっきり言って数百万倍面白いです。
そーゆー意味では「今さら観た」ってのにも、逆に意味があったかも。
感想が出尽くしてますから、全部読めるし。
なんと言っても当事者じゃないのでヒトゴトのように思えて心も痛まない!(笑)
ぜひとも皆さん、ネット上にある『DEVILMAN』の感想を心の底から楽しむタメにも、映画『DEVILMAN』は観ておく事をオススメします。
なーに、たった2時間の拷問に耐えればいいだけの話ですって(笑)。

●『バンブーブレード』2008年03月18日 02時23分33秒

『バンブーブレード』という美少女アニメの音楽が仙波清彦だった。
どひー。

美少女アニメってあまり好みでは無いのですが、この『バンブーブレード』という美少女アニメは出来がとても良く、タマに観てたりしたんですよ。
全26話で残りの放映2回という今日の時点で、そーだな〜、都合5回くらい観たのかな?
観た5回の全てが、ザッピングしてる途中で手が止まり、そのまま観た。つー感じで、別に追い掛けて観てたワケじゃ無いんですケド。
でも手が止まるっつーコトは、この手のモノが好みじゃないようなそんなオレでも、この作品は珍しく好評価してたりするワケね。
「このアニメは美少女アニメのクセに(←偏見(笑))演出がちゃんとしてたので、普通の人でも(美少女アニメ嫌いでも)観るに耐えうる、作り手の目線が高いとても良い作品だな〜。」と常々思っていたと。
そしたらこの作品の楽曲は仙波清彦が手掛けているのだという事を、ようやく今日知りました(笑)。
おおー。
随分と出来がイイアニメだと思っていたらそんなトコ(音楽)にも、ちゃんとこだわっていたんですね。
自分がこの『バンブーブレード』に好評価を下した理由の一つに、自分で合点がいきました(笑)。
仙波清彦と美少女アニメって、響きが不自然ですが、ソレが逆に見事に合っていたのではないかと。
良いコトです。
こういう良い作品は、もっと評価してあげてもいいと思います。

TVアニメ版『ゲッターロボG』2008年03月20日 19時12分15秒

よーやくTVアニメ版『ゲッターロボG』のDVD-BOXを観終わりました。
何年越し?(笑)
とはいえ観る時は一気に観てしまうので、観てなかった10話分くらいを立て続けに観ましたよ。

子供の頃は多分ちゃんと観てたと思うんですが、石川漫画版に比べ、TVアニメ版って何だかストーリーを全然覚えていないんですよね。
ゲッタードラゴンかっこいい! とか思ってたよな。てな記憶はあるんですが。
多分『ゲッターG』の頃になると、もう「『ゲッター』はアニメよりマンガの方が面白い」な子供になっていたせいもあるのではないかと(笑)。
だからよく「ハヤトとミチルさんが『G』の最後にくっついた」という文章を見かける度に「えー? そうだったっけ?」と思っていたんですよ。
で、ようやくその意味がわかりました。
あれは、くっついてないですよね?
ハヤトがアプローチをかけて、ミチルさんがソレをとりあえず受け止めただけ。
ミチルさんの返事は直接には描かれて無い。
だから、幼心に「ハヤトとミチルがくっついた」とは解釈出来なかったから、そういう風にはオレの記憶に残らなかったのだと。
なるほど、合点がいきました。
てかあの状況でハヤトに「直しておいてくれ」と、母の形見の十字架のペンダントを渡されたら素直に「そうですか」と受け取るしかないし、生還したハヤトに「ミチルさんに持っていて欲しいんだ」と言われて「いや、そんな大切な物を受け取るワケにはいかないから」と突き返したら、最終回のラスト数分がギャグオチになって終わっちゃいますよ(笑)。演出上そんな「ペンダントを突き返されるハヤト」なんて姿は似合わないし。
(ソレはソレで観たかった気もしますが)
なので大人になった今観返してみても、やっぱ「ハヤトはミチルさんに盛大なアプローチはかけたけれども、ミチルさんの気持ちがハヤトに向いたかどうかは定かでは無い」という風に思えます。
番組の幕が降りた舞台袖で「コレ、やっぱり受け取れないわ」と、こっそり十字架のペンダントを突き返していたりして。
みんなが見てる前で突き返すほど、無神経なミチルさんでもないでしょうからね(笑)。

個人的な意見としては、TVアニメ版のミチルさんはゲッターチームの誰とも付き合う事は無いように思えます。
(強いて誰と付き合うのか? と考えれば、当時のテレビアニメ的に言えばやっぱ竜馬なんだろうな。
でも現実的に結婚相手としてはムサシかと。
ミチルさんのファザコン的要素を考えると体型的にはムサシが一番近いし(笑)、ミチルさんってプライドが高いから、見下せる要素があるムサシの方が後々上手く行きそうな気が(笑)。
ミチルさんってダメンズ好きそうなキャラですよ。多分。
プライドが高い割には母性本能をくすぐられるのに弱そう。
ハヤトを好きだとしても、ソレはホストに入れ込んでしまうような一時的な感情のように思えます(笑)。
曰く、付き合ったとしてもすぐに別れそう。)


あと思ったのが、TVアニメ版の最終回って『ゲッターロボ』も『G』も、なんかイマイチ展開がショボイですよね。
あの当時のTVアニメの最終回シナリオって(『ゲッター』に限らず)こんなモンでしたっけ?
やっぱショボイと思えるのは、石川漫画版が頭にこびりついちゃってるせいなのかな〜?(笑)
百鬼要塞島も結局ハヤトが落としたようなモン(笑)だし、無敵戦艦ダイもムサシが落としてるし(しかもコマンドマシンで)、意外と「ゲッターロボ自体がその主役ロボットとしての無敵の力で勝利した」というカタルシスを感じさせてくれないんですよね。
逆に言えば「ロボに頼らない個人の力こそが真の勝利への鍵/主役はロボットでは無く人間」という話を描きたかった。とか、そんな見方も出来るワケですが。
まぁそうだとしても、ソコを大人でも納得出来る程に深く描き切るには、当時の子供向けロボットアニメでは不可能に近い話だと思うので仕方が無いか。←この文章自体も矛盾してるし。
(だからこそ、石川漫画版があるのだし、近年のOVAシリーズとかがあるわけだしね)

ゲッターロボ-The beginning- 004(第1章)2008年03月22日 04時43分08秒

 ………………………
 ………………………

「う〜ん……」
 研究室の床に寝かされていたチンピラヤクザが目を覚ます。
 が、起きるなり「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」と叫び声を上げて、再び泡を吹いて失神してしまう。
 それはまるで、世にも恐ろしい何かを見たかのような絶叫だった。
「……早乙女君、なんだねコイツは?
 人の顔を見るなりまた気絶しおったぞ」
 敷島教授がチンピラヤクザを覗き込んでいたのだ。
「いやぁ、ソレは無理も無いかと……」
 早乙女が苦笑いをする。
 敷島教授——早乙女が通う大学院で教鞭を取る、早乙女の師匠とも言える人物である。
 敷島自身が過去に行った実験の失敗による事故が原因で、その顔の半分は焼けただれており、引きつった筋肉が左右の目の大きさを変えてしまっているのだ。
 そんな敷島の姿が不意に視界に飛び込めば、気を失ってしまうのも無理は無い。
 デブとヤセの二人のチンピラがあわてて介抱すると、顔に二の字の下駄の跡を付けたチンピラが、ようやく息を吹き返した。

 彼の話の内容はこうであった。
 早乙女がこの地域で一番力を持っていた<羅王組>を壊滅してしまったために、この地区のヤクザ組織の空洞化が起こり、全国支配を目論む広域暴力団が手を伸ばして来たのである。と。
 地元密着型の小さなヤクザ組織である自分達<青空組>は<羅王組>とは不可侵の条約を結んでいたものの、<羅王組>が壊滅してしまった今、その広域暴力団<天地会>は非道な手段を用いて<青空組>のシマを取り上げようといているのだ。
 そのためにも、少しでも腕っぷしの強い構成員を探していた所、街中で暴れている竜崎という男を見付け、スカウトしたのだという話である。
 つまるところ話の大元としては、ヤクザの縄張り争いが起因するらしい。
 そしてその起因には、早乙女も無関係では無いとの意味合いを含んでいた。

「でもね、早乙女の旦那。聞いてくださいよ。
その竜崎って野郎はムチャクチャな野郎で、普段は大人しいんですが突然暴れ出しては組の机や壁、そこら中の物を壊しまくるし、兄貴分のオレらの言う事なんざ聞きもしねー、手の付けられないとんでもねーヤツだったんですよ。
 ハジキが飛び交う中も平然と突き進みやがるんで、そりゃ天地会との小競り合いの時なんかには役に立ちましたけど、一旦暴れ出すとそこらに居るカタギの人間にまで無差別に手を出して、殺しちまうんじゃねーかって騒動も一度や二度じゃすまねーって始末でして。
 この間なんざ、それじゃ流石にマズイだろってんで、組長に頼んでそんな竜崎をいさめてもらおうとしたら、逆に顎の骨を砕かれましてね。組長、今入院なさってるんですよ。
 本来、親に手ぇ上げたそんな野郎は破門どころかコンクリ詰めにして海にでも沈めちまうトコロなんですが、なにぶんこんな状況ですから力のある駒は欲しい。と、組長も寛大なお心を示してくださった。
 なのに、組長不在をいいことに『天地会に対抗するには今の組長じゃ生温い』なんて一派が、竜崎の奴を祭り上げ始めちまいまして、ウチの組、もう今メチャクチャなんでさ。
 組長に大恩のあるアッシらにしてみれば、この組の一大事に指をくわえて黙っているワケにも行かず。
 そんな時に早乙女の旦那のお噂を聞きつけ、お知り合いでもある竜崎の奴に、ガツンと一発お灸をすえていただけねーモンかと。
 こうして頭を下げにお願いしに来た次第であります。
 それにしてもあの竜崎って奴ぁ、何ですかね、バケモンってでも言うんですかね?
 刀で切りつけられても、切りつけた刀の方が折れちまいますし、とうてい人間とは……」
「ああ、もういい。わかったから」
 このチンピラは、本来緊張さえしなければきっと大阪のオバサンみたいなオシャベリな性格なのであろう。
 喋りたい気持ちが喋るという行為より先に来てしまうから、不必要に舌を咬んでしまうのだ。
 マシンガンのように息つくヒマも無く一気に喋り倒すチンピラを、もう充分だとばかりに制止し、早乙女は腕を組んだ。
「アンタの話を疑う訳じゃ無いが、それ、ホントに竜崎か?」
「ええ、紛れもなく竜崎達也の事でさ。早乙女の旦那の話も、竜崎の奴から聞いた事がありやしたんで、今こうしてお話させていただけてやす」
「まさかてめー、竜崎にヤク打ったりしてねーだろーな。
 今じゃヒロポンだって違法なんだぜ」
「め、滅相も無い。天地会のヤツラならどーだか知らねーケド、ウチではヤクは御法度なんでさ。
 組長にきっつく戒められてやす」
 早乙女は口をヘの字に結び、考え込んだ。
 チンピラの話が本当ならば、それは早乙女にとって、にわかには信じられないものであった。
 早乙女の知る竜崎は、背丈こそ大柄ではあるが理論派であって肉体派では無い。典型的な学士タイプなのだ。
 格闘技の経験どころか、運動関係全般に関し不得手だった筈なのである。
 手より先に口の方が回る性格で、竜崎が傍若無人に暴れ回る姿など、まったく想像すら及ばない。
 覚醒剤中毒でも無ければ、いったい何が竜崎の身に起きたのであろう。
「わかった、行こう。リッキー、付き合ってくれ」
 ここでうだうだ考えていてもラチが開かない。
 何より行方不明の竜崎の情報が思いも因らぬ形で飛び込んで来たのだ。調べる価値は充分にある。
 こういう時の早乙女は、決断も早ければ行動も早い。
「え? 御助力いただけるんですか?」
 チンピラヤクザの顔が明るくなった。
「別にあんたらの手助けをするつもりは無いさ。竜崎に会いに行くだけだ。
 で、あんた名前は?」
 早乙女はチンピラヤクザの名前を聞く。
「へい、申し遅れました。
 アッシが<イボマラの竜作>。
 隣のヒョロヒョロとした野郎が<七曲がり千吉>。
 こっちのグラサンかけてますデブな野郎が<子宮突きの水膜>でさ。
 どいつもチンケなヤクザ者ですが、どうかひとつ、お見知りおきを」
「……また随分と凄い名前だね」
 こんなどーしようもない二つ名を構成員に付けて喜んでるような組ならば、天地会や竜崎とは関係無しに、もしかして潰れても当然なんじゃなかろうか?
 間抜けな彼らの名前を聞いて、早乙女はこめかみを押さえた。
「いや、そんな。褒めないでくださいよ、旦那」
 真顔で照れてる竜作。
 ダメだこりゃ。と早乙女は心の底から思った。
「ねぇねぇ、和子達どうしようか?」
 リッキーが聞く。
 有線の家庭用電話もまだまだ普及率が高く無いこの時代、外に出てしまった和子に直接連絡を取る手段は当然の如く、無い。
 竜崎の下宿の大家に伝言を頼むという手も、あることはあるが……
「コイツらの話もどこまで信用したものかもわかんねーし、とりあえずオレたちだけで行くしかないだろ」
 それにヤクザ者とつるんで行動してると知ったら、和子の雷がまたいつ落ちるとも限らない。
 それだけは何としても避けたい。という気持ちも早乙女にはある。
 和子も美奈子を送ったら、また学院に戻って来ると言っていたのだ。合流するならそれからの方が連絡が取りやすいだろう。
「イボマラさん、竜崎の居場所は解るんだな?」
「へい。今の時間なら詰所の方に行ってるハズでさ」
 早乙女の問いに即答する竜作。
「よし。案内してくれ」
 チンピラヤクザを従え、足早に早乙女が部屋を出て行こうとした時、敷島教授が呼び止めた。
「ん? おい、早乙女君。レポートはどうするつもりだね?」
 敷島教授は、早乙女のレポート制作の進行具合をうかがいに研究室に来ていたのである。
「すみません教授。ちょっと急用が出来てしまったんで、もう少し待ってもらえますか?
 今日中には提出しますから」
 そう言い残すと、早乙女とリッキーと三人のチンピラヤクザは研究室から飛び出して行った。

 一人取り残された敷島教授は、頭をポリポリと掻きながら、とぼとぼと廊下を歩いていた。
「……仕方ないのぉ。勝手に進めとくか」
 何かをぶつぶつとつぶやいた後、突然閃いたかのように、奇声のような大きな声を上げた!
「おっ! そうじゃ!! ジェネレータの出力を3倍にしてみたらどうじゃろうか!
 圧縮工程に負荷がかかるが、そっちの方が破壊力が上がるしのぉ〜」
 自分の発想に小躍りしながら廊下を飛び跳ねる敷島。
 楽しそうである。
「いやぁ〜、早乙女君も実に興味深いエネルギー見つけたモンじゃ。
 コイツを使えば、面白い兵器が色々と作れそうじゃわい。」
 ……実に楽しそうである。

To be continued.

↓NEXT
http://hiroz.asablo.jp/blog/2008/03/23/2818624

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↓小説の目次&登場人物紹介&用語解説はコチラ
http://hiroz.asablo.jp/blog/2008/03/26/2846713

ゲッターロボ-The beginning- 005(第1章)2008年03月23日 15時15分27秒

***
 
 柔らかい秋空の陽光が少しだけ傾き始める。
 綺麗なすじ雲が鮮やかに大空を流れていた。

 歓楽街の通りでは、そんな爽やかな秋風を遮るかのように、必死に客を呼び込む店員のあざとい勧誘の声が飛び交っている。
 心地よい秋風すら澱ませてしまう程の雑然さの中にこそ、人の本質という物は存在するのかも知れない。
 通りの角にある新装開店をしたらしいパチンコ屋の軒先には花輪が並び、平日の午後だというのに、遊興にふける客の姿で賑わいを見せていた。
 数年前に施行された連発式パチンコ機の禁止令によりそのブームが下火になったとはいえ、依然としてパチンコは大衆娯楽の殿堂である。
 庶民は綺麗に光る銀色の玉に夢と欲望を乗せ、レバーを弾き続けるのだ。
 内装も新しい店内にはそんな綺麗な装飾とは裏腹に、欲望に満ちた、人の歓喜と悔過が交じり合っている。
 客の一人の若い男は負けが込んでいるのか、灰皿に埋もれたタバコの吸い殻からまだ吸えそうな残り代のあるものだけを選り分けていた。
 シケモクのひとつを口にくわえると、渋い顔をしながらマッチで火を点ける。
 二口も煙を吸い込むと、その火はフィルターに達してしまい、男は再びシケモクを無造作に灰皿に押し付けてしまう。
 男は手にした一個のパチンコ玉を見つめた。
「頼むぞぉ、コレが最後のひとつなんだ」
 男は眉間の前にそのパチンコ玉をかざすと、祈るように呟いた。
 パチンコ台レバーの上、右端にある玉の投入口に、パチンコ玉を持つ男の左手が伸びる。

 大戦の戦後復興も一段落したこの時代。
 土木作業を生業とした肉体労働者から頭脳労働者、いわゆるサラリーマンと呼ばれる新中間層へと労働の質のシフトが起こり始めているこの時代において、己が欲望のまま、享楽的に生きる若者達の姿が目立つようになっていた。
 敗戦を享受した事で築き上げられた平和の中で生きる、行き場の無い衝動がそうさせているのであろうか。
 旧来の道徳感を無視した、快楽にまかせた情動で動く事を良しとする若者達。
 彼らは酒や暴力・異性に溺れ、その青春を謳歌していた。
 とはいえその無軌道振りを心行くままに謳歌出来るのはやはり一部の裕福な者の特権であり、大半の若者は、そんな流行りに憧れ真似をしつつも、生活費すらままならない日々を送っているものである。

 その若い男も御多分に漏れず、親からの仕送りや学費を遊び呆けて使い果たし、ポケットに残ったわずかな小銭で、銀色のパチンコ玉に一縷の望みを託していたのだ。
 大音響で店内に流れる軍艦マーチが、若い男の浅はかな希望の後押しをする。
 若い男はパチンコの盤面を凝視しながら、念を込めるように最後の一投のレバーを弾いた。
 勢い良く玉が天釘へと向かって走る。
 天釘に弾かれ、踊るように落下して行くパチンコ玉。
 風車に絡みつくと、玉は吸い込まれるようにチャッカーに落ちた。
 チン、ジャラジャラ。
 小気味良い音と共に、大量のパチンコ玉が下皿から吐き出される。
「ぃやったぁーーー!!」
 男の念が通じたのか、最後の玉は、見事大化けをしてくれたのだ。
 苔の一念岩をも通すとは、この事であろう。
「こ、コレで3日振りにマトモなメシが食える〜!!」
 ツキが回って来たのか、男が弾く玉は次々にチャッカーへと落下し、見る見る内にドル箱が積まれ始めた。
「うおぉぉ! オレってもしかしてパチンコの天才かよ!
 パチプロで食って行けんじゃねーの?」
 打って変わってのあまりの好調振りに、ハシャギまくる若い男。
 が、調子に乗り過ぎたせいで、隣の席の男に肘をぶつけてしまった事に彼は気付かなかったのだ。
 若い男は横から不意に後頭部を掴まれ、パチンコ台のガラス面に勢いよく頭を叩き付けられた!
「がっ!!」
 ガラスが割れる派手な音と共に、若い男の額からは血が噴き出していた。
「え? ……あ?」
 自分に何が起きたのか解らずに若い男は困惑する。
 一拍のタイムラグの後、激痛が襲って来た。
「い、痛てぇ……
 何すんだよ! てめぇ!!」
 血を流す額を押さえながら、男は隣の人間を睨み付けた。
 欲望のままに生きる事が流行りのこの時代の若者である彼にとっては、喧嘩程度に躊躇は無い。
 誰に喧嘩を売っているんだとばかりに吼えたてる。
 が。
 噛み付いた相手が悪かった。
 そこに居たのは見上げる程の大男だったのである。
 大男はそんな若い男のガンタレなどは意にも介さずに、今度は側頭部を掴むと、再びパチンコ台へと若い男の頭を叩き付けた。
 そのあまりの怪力に、若い男の頭はパチンコ台にめり込んでしまう。
 若い男のドル箱が転がり、パチンコ玉が店内に散乱した。
「うるせーよ」
 大男は、無表情のまま立ち上がった。
 大男は、竜崎達也の顔をしていた。

 突然の乱闘騒ぎに、店内は騒然となった。
 若い男の流血におののき逃げ出す客や、騒ぎを聞きつけ野次馬として取り囲もうする客で店内がごった返す。
 一列に並んでいるパチンコ台の後ろで、当り玉を補給していた店員は何事かとパチンコ台の上から顔を出している。
 店の奥から店員らしき男が数人、飛び出して来た。
 見るからに普通の店員には見えない、がっしりとした体躯の、強面の風貌をしている面々である。
 この店の用心棒の類いであろう。
 用心棒の店員は、竜崎の肩を背後から掴んだ。
「お客さん、困りますね」
 その手は、竜崎の肩を締め上げる。
「ちょっと奥まで来てもらえませんか?」
 口調こそ丁寧だが、威圧するようにドスの利いた声で、用心棒は言う。
「さわるな」
 竜崎は用心棒の手を払い除けるまでもなく、肩越しに裏拳を用心棒の顔面に叩き込んだ。
「うげっ!」
 顔を凹ませ、用心棒が倒れ込む。
「てめぇ! ココを何処だと思っていやがるんだ!!」
 野次馬を掻き分け辿り着いた用心棒が3人、竜崎の回りを取り囲む。
 竜崎は無表情のままだ。
 その怪し気な状況に、野次馬の客達は、店の外へと飛び出して行く。
 気が付けば10人の男達に、竜崎は囲まれていた。
 取り囲む男達の後ろから、サングラスを掛けた男がぬっと現れた。
 どうやらその男が、コイツらのボスらしい。
「困るなぁ、<青空>さんよぉ。
 見ろ。お客の皆さん、びっくりして帰っちまったじゃねーか。
 聞いてるぜ、アンタ、竜崎っていったっけ?
 この落とし前、どーつけてくれんだ? ああ?」
 サングラスの男は、ねぶるように竜崎の顔を睨み付ける。
 実はこのパチンコ屋、どうやら新しく出来た天地会の拠点のひとつらしい。
 竜崎を取り囲む男達は皆、天地会の構成員だった。
「どーするもこーするもあるかぁ!
 こーしてくれるんだよ!!」
 今まで何処に隠れていたのか、青空組のチンピラが二人、竜崎を取り囲む連中の背後から襲いかかった。
 手には小刀を握りしめている。
 狙いはサングラスの男だ!
 しかしそれは見抜かれていたのか、竜崎を取り囲んでいた男達に、いとも簡単に取り押さえられ、袋叩きにされてしまった。
「<青空>さんも、随分とセコイ真似してくれるじゃねーか」
 サングラスの男はくわえたタバコに火を点けた。
 ふぅと煙を吐く。
「もういい、かまわねーからそいつも畳んじまいな」
 男達が竜崎に一斉に飛び掛かった!

To be continued.

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ゲッターロボ-The beginning- 006(第1章)2008年03月23日 21時19分13秒

***

 早乙女たちは、パチンコ屋に群がる人だかりを見て唖然とした。
 青空組の詰所で、竜崎が数人を引き連れ、天地会の息の掛かったパチンコ屋に出向いたと聞いてここに来たのだ。
「イボマラのぉ、随分遅かったじゃねぇか」
 青空組の幹部らしい男が、竜作を見付け、声を掛けた。
「中畑ぁ! てめぇの仕業か!」
 スカした顔をする中畑と呼ばれた男の胸倉を、激昂した竜作が掴む。
「く、く、組長は事を荒立てるなと言ってたハズりゃ!
 そ、ソレをきさまは泥をるるような真似をしやがりるれぇ!!」
 あまりにも激昂し過ぎたのか、怒りをぶつけるべき台詞を、ちょっと咬んだ。
 例の如く、竜作の口の中から血が滲み出す。
「組長は甘いんだよ。これからは金と力の時代だってことが解っちゃいないんだ。
 オレに任せればホラ、ご覧の通り。天地会なんざワケねーだろーが」
 中畑は掴まれた胸倉から竜作の手を払い除ける。
 ついでに顔に飛んだ血まみれの唾も拭いさる。
 中畑という男、竜作のその癖にはもう慣れ切っているのだろう。
 顔に唾を飛ばされたというのに、冷静なものである。
「お前もいいかげん、オレの方に着け。
 これからはオレ達二人で青空組を大きくして行こうじゃないか」
「てめー! どの口がそんらころを言ひひゃがる!!」
 キスでもしてしまうのではないかというくらいに顔と顔を突き付け、ヌーという唸り声を出しながらお互いを睨み合う二人。
 両手を後ろに伸ばして向き合うその二人の絵面は、子供のケンカにしか見えない。
 青空組ってのは、こんなヤツしか居ないのだろうか。
 二人に早乙女のゲンコツが飛んだ。
「てめーらの都合はどーでもいいんだよ! あの中に竜崎が居るんだな?
 リッキー! 行くぞ!」
 大きく膨れ上がったタンコブを押さえてしゃがみ込む二人を尻目に、言うが早いか、早乙女とリッキーは店内に飛び込んだ。
「竜崎! 居るのか!!」

 二人が飛び込んだ店内は、まるで爆撃にでも合ったかのような状態だった。
 パチンコ台は全てが壊れ、倒され、無傷の物はひとつとして無い。
 床には割れたガラスの破片や、砕けたパチンコ台の部品、蒔かれたように散乱してるパチンコ玉で覆われている。
 新装開店の店とは到底思えない程の、惨たんたる有り様だ。
 竜崎を襲った用心棒達は全員、そんな廃材と化した機具に混じり折り重なって倒れていた。
「竜崎!」
 視界を遮る物が無くなり見通しの良くなった店内の中央には、グラサンの男の首を掴み、片手で高々と持ち上げている大男の姿があった。
 竜崎である。
 竜崎は無表情のまま、早乙女を見た。
「……なんだ。早乙女か」
 早乙女は竜崎の姿を見て驚いた。
 細身であった竜崎の身体はプロレスラーかと思える程にパンプアップされ、背丈も10センチは大柄になっているのだ。
 しかし、獣のようにも見える精悍な体格とは裏腹に、その顔色は死人のように土気色で、覇気という物がまったく感じられない。
 たったひと月で、人はこんなにも変わってしまえるものなのだろうか?
 別人のような竜崎の変化に、早乙女には同一人物である事すら疑わしく思えた。
「お、おまえ……本当に竜崎か?」
 竜崎は無表情のまま答える。
「……ひどいなぁ、早乙女。俺に決まってるじゃないか」
 感情の欠落した、何とも無機質な声色。
 竜崎は、まるで軋んだ音を立てながら動く油の切れた機械のようにぎこちなく首を動かし、早乙女の方を向く。
 その目には、生気ある光りが宿ってはいなかった。
「す、すまん。何だか別人みたいだぞ? お前」
 竜崎の頬がピクリと動いた。
「なぁ、何があったんだ? 突然居なくなって、みんなお前の事心配してんだぞ。
 とりあえずそいつを降ろして、オレ達と一緒に帰ろうよ。な?」
 早乙女の言葉に、竜崎の頬がまたピクリと動く。
 早乙女は竜崎をなだめるように、喋りながら一歩ずつ近づいて行く。
「お前が居てくれないと困るんだよ、研究だってなかなか進まないしさ。
 ほら、こないだの実験。あれをさ、竜崎に検証してもらいたいんだよな。
 だからさ、一緒に帰ろうよ。みんな、待ってるからさ」
 早乙女は不要な刺激をしないよう言葉に気を付けながら、とにかくこの場から竜崎を連れ出そうとした。
 こんな騒然とした場所に居てはダメだ。
 説得出来るものも説得出来なくなる。
 何で竜崎がこんな事になってるのかは、その後に聞けばいい。
 しかし、友を思うそんな早乙女の気持ちが、当の竜崎に届く事は無かった。
 竜崎の肩が小刻みに震え出した。
「……お…れは……」
「竜崎?」
「……俺は……俺は…………俺だぁああああああ!!!」
 突然雄叫びを上げた竜崎は、掲げていたグラサンの男をまるで野球のボールか何かを投げるかのように、早乙女に向かって投げつけた。
 尋常では無い怪力!
 常軌を外れた行動に不意を突かれた早乙女には、飛んでくるグラサン男の身体を避ける事が出来ない!
 あわててリッキーが早乙女を押し退ける。
 腰を溜めてグラサン男の身体をキャッチした。
 リッキーの力もそれはそれで尋常では無い。
「アンタぁ! 何すんのよ!
 人間は投げていいモノじゃないのよ!!」
 文句を言うリッキーの目の前に、竜崎の身体が飛び込んでいた。
 5メートル程はあったハズの距離を、竜崎は一瞬の内に詰めていたのだ。
「うウぅぅおォ……
 俺に命令……するなぁぁぁあああああ!!!」
 叫ぶと同時に岩のようなその拳をリッキーの顔面に叩き付ける!
 グラサン男を抱えてしまっているリッキーは両手が使えず、そのまま顔面を殴られ吹き飛んでしまう。
「リッキー!!」
 自分を庇ったために倒されてしまったリッキーを見て、早乙女がキれた。
「竜崎ィ! てンめぇー! 自分が何やってンのか解ってンのか!?」
 竜崎を連れ戻しに来た事など、瞬間頭から飛んでしまった早乙女が竜崎に殴りかかる!
 が、鋼のような竜崎の腹筋はびくともしない。
「……俺に……触るなァァあああ!!」
 払い除けるように振り回す竜崎の腕が、早乙女を薙ぎ倒す。
 壊れたパチンコ台に叩き付けられる早乙女。
 背中をしたたかに打ち付けた。
 一瞬息が出来ない。
 早乙女は床に転がってた角材を拾い、立ち上がりざまに竜崎の頭を殴り付ける。
「竜崎ィ! てめー! いいかげんにしやがれ!!
 みんなてめーの事、心配してんだって言ってるだろ!!
 美奈子さんだっててめーを心配して、わざわざ田舎から探しに来てくれてンだぞ!」
 早乙女の言葉に、竜崎の動きが止まった。
「……美奈…子?」
「そうだ、田宮美奈子さんだよ。てめーの恋人なんだろ?
 あんな美人に心配掛けやがって! てめー、何様のつもりだ!!」
 最後の方は早乙女の本音が混じっているような気もしないではないが、美奈子の名を聞いた竜崎の瞳に、意志の光りが射したように見えた。
「……美奈子……」
 動きの止まった竜崎を見て、早乙女は角材を手放した。
「そうだ。
 今、和子さんがお前の下宿に案内してるよ。
 だからさ、オレ達と一緒に帰ろうぜ。な?」
 手を差し伸べる早乙女。
 あれだけ無表情だった竜崎の顔が、苦悩するような、悲しそうな、複雑な表情を見せた。
 が、次の瞬間、
「うわぁぁァあァアああああ!!!!!」
 大声を上げ、竜崎は暴れながら店の外に飛び出してしまった。
 野次馬の人だかりが、飛び出る竜崎を避けるため、モーゼを前にした海のように割れて道を成す。
「竜崎ぃ!!」
 早乙女は咄嗟に追い掛けようとするものの、瓦礫と化している店内の足場の悪さが邪魔をした。
 早乙女が店の外に出た時には、人間とは思えない程の敏捷さで飛び出した竜崎の姿は、もう何処にも見えなくなっていたのである。
「早乙女、あいつどうしちゃったんだろうね?」
 店から出て来たリッキーが言う。
「わからない。
 でも、竜崎の奴……」
 ……泣いていた。
 そう。
 早乙女にはあの時、竜崎の目から涙が流れていたように見えていた。

***

 その騒ぎの一部始終を遠巻きに見ていた姿があった事に、その場に居た全ての人は、気付く事が無かった。
 そして時期外れのトレンチコートを着込んだその姿が消えた時、子供が一人、泣き出していた事も。
 母親は幼い息子がこの騒ぎに怖くなり泣き出してしまったのだと思い、子供を連れ、足早にパチンコ屋の前から立ち去って行った。
 実は、子供の泣いた理由は本当はそうでは無かったのだが、子供の言う事があまりに突拍子も無かったので「怖い思いをしたから、何かを見間違えちゃったのね」と、母親は優しくなだめてあげるのだった。
 その時、子供は隣に居る母の手を握り締めこう言っていた。
「お、おかぁさん……い、いま、ヘビ男がいたの……」



第1章<早乙女と竜崎と> —了—

To be continued.

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小説を書いてて思う事2008年03月24日 16時16分57秒

子供の頃、漫画家になりたかったワリには漫画が描けずにいつの日にか挫折してたワケですが(笑)。
何で挫折したかったって言うと、物語が書けなかったからなんですよ。
や、当時の自分なりに「このストーリーは面白い!」ってネタを思い付くからこそ、漫画家になりたいって思ってたんですケドね。
なのに何故? って思うでしょ?
ソレは普通の部分が書けなかったからなんですよ。
言わば起承転結で言えば「起」と「承」の部分。(「起」も冒頭シーンは書けるんだけど、それを終えた後、「承」に向かって行く部分とか)
ちゃんと説明するならば、まったく書けなかったのでは無く「面白く書けなかった」というコトなんですが。

多分、普通の人がお話を書きたいとか、曲作りたいとか、創作意欲が湧く瞬間って「転」の部分だったり「サビ」の部分を思い付くワケですよね。
だってソコが一番グッと来る部分なんだから。
むしろ閃いて当たり前というか、先ずソレが無いと創作する事自体が始まらないし。
だから、その着想の部分が一番魅力的であって当然なんですね。
そのネタ自体は面白くて当然なんですよ。
で、本当に面白い作品が書ける人と、そうで無く挫折してしまう人の差って何だろうと考えると、その閃いた着想以外の部分を面白く書けるのかどうか? に掛かって来るんだと思います。
つまりは日常の部分とか。(仮に普通の学園物書いてたとしても「転」の部分は特殊な出来事が起こるからこその「転」、という意味に対しての「日常」ね)
つまり「普通」の部分ですよ。
曲で言えば「Bメロ」辺り。

だって、閃いたネタの部分がその創作物の中で絶対一番面白いんですよ。
ソコ以外が面白くなっちゃったら、ソレこそ「転」では無くなっちゃいますよ。
他は書いてても、それよりはつまんなくて当り前じゃん。
と思って書いちゃうワケですね。
てか、私はそうでした。
というより、その普通でつまんないシーンを面白く書けるスキルと、面白く書こうする意識が無かったのです。
だからネーム(絵コンテ)を書き終わって、下描きを始め出すと
「今、自分が描こうとしているこの話って、ホントに面白いの?」と
自問自答が始まって、描けなくなっちゃってたのですよ。

という事を、最近ようやく理解出来ました。
『からくりサーカス』を読んだコトで。

「普通」の部分を面白く書くタメには何が必要なのか?
答えは、ちょっとしたコトにも「ドラマ」を盛り込む事。
それと、普通でつまんないシーンを何とか面白く書こうとする強い意志。
それがどういう事なのかが、ようやくこの年になって解った気がします。
(だから、私が小説書くとムダに長くなっちゃうんだよな〜。ってのが最近の反省点ですが(笑))
つまるトコ、いつも自分で言ってた「目線の高さ」なんですよね。
当時にの自分にはソレが無かった。
ソレに気付くまでに何十年も掛かってます。
どんだけ無能なんでしょうね、私(笑)。

で、何が言いたいのかと言うと、
ネット上に自分の書いた小説を晒してしまおう。
なんて暴挙に出れるのも、
ちっとはソコら辺が何とかなって来てるんではないかという
自負もあっての事だったりするワケですが、
まだ「普通のつまんないトコを、なんとかがんばって
面白くなるよう努力してる」第1章の時点でも、
カゼさんに御自分のサイトで紹介していただけるくらいに
喜んでもらえてるという事実が、
「少しは自分も書けるようになっているんだな」と
客観的に思え、とても嬉しいです。

という事は。
この文章の裏を読んでいただければお解りかと思いますが、現在書いている小説は、つまりこの先……(笑)

あー、早く第3章と第4章とエピローグが書きて〜!!
(第2章は、書くのにかなり努力を要しそうなので、むしろ書かずに飛ばしたい(笑))

あーあ、ひろzさんたらこんな文章書いてないで早く続きを書かないのかなぁ。
オレも早く続きを読みたいのに(笑)。←ヒトゴト。

ゲッターロボ-The beginning- 007(第2章)2008年03月26日 08時25分19秒

---第2章 異形の者---

 田宮美奈子は竜崎達也の下宿する古びた木造アパートの二階の部屋で、竜崎の帰りを一人待っていた。
 窓の外は夕焼けの色に染まり始めている。
 竜崎の部屋には美奈子には到底理解出来ないような、難しい学術書が所狭しと置かれ、本棚から溢れ出した本の山が畳の上に何段も平積みされていた。
 その雑然さを除けば、研究一筋である竜崎の性格をそのまま表したような、まるで今日の若者らしさの感じられない何ともシンプルな部屋である。
 美奈子は、昔と変わらないそんな竜崎を感じられたから、この部屋を好きになれた。
 何より彼の勉強机の上に、散乱するノートや筆記用具に埋もれながら、写真立てが顔を覗かせているのに気付いた時は、嬉しくて涙が出そうになった。
 飾られていた写真に写っているのは、二人の姿。
 椅子に座る美奈子の傍らに立つ学生服姿の竜崎の写真。
 それは、竜崎が田舎を出る際に二人で写真館に寄り、撮影してもらった物だ。
 その写真の中の竜崎は、優しく美奈子の傍で微笑んでいる。
 だから、美奈子はただ待ち続ける事になっても辛くはなかった。
 その畳の部屋で、美奈子は正座をしながら、竜崎の帰りを待っている。
 ここまで案内をしてもらった和子は先に帰した。
 大家に鍵を貸してもらえ竜崎の部屋に入れた事で、美奈子は一人で待てると思えたからだ。
 変わらぬ竜崎の姿が感じられるこの部屋の匂いに触れられたから。
 美奈子は竜崎を信じる事が出来た。
「皆さん、いい人達ですね」
 見知らぬ他人である美奈子を心配して、優しく接してくれる早乙女や和子。
 都会は怖い所だと思っていた美奈子にとって、あのような人達に囲まれている竜崎はきっと幸せな日々を送れているのだと、安心する。——だから、
「私は、いつまででも達也さんを待ちますよ」
 机の上の写真に、そう語り掛けるのである。

 待ち続けると決めたとはいえ、女一人で初めて田舎を遠く離れた疲れもあったのだろう。
 美奈子はいつしかうたた寝をしてしまっていた。
 夕焼けの赤色が深まり始めた時、部屋の戸が乱暴な音を立てて突然開いた。
「……美奈子……か……?」
 その声に美奈子が驚き振り向くと、大男が部屋に倒れ込んだ。
「達也さん!」
 美奈子の目に飛び込んだ竜崎の姿は、まるで別人のようだった。
 美奈子の知る竜崎の姿より体格が二回りは大きく、身体中が厚い筋肉で覆われている。
 美奈子は慌てて竜崎の傍に駆け寄った。
 倒れ込んだ竜崎の衣服はボロボロで、その顔は土気色をしている。
 破れた衣服から覗く筋肉からは血管が浮き出ていて、小刻みに脈動していた。
 美奈子は、その場で気を失ってしまった達也を懸命に部屋の中に運び、布団に寝かし付ける。
 細腕の美奈子には、かなりの重労働である。
 うなされる竜崎の顔を見て、美奈子は心配になった。
 ——この人に、いったい何があったのだろう——
 大柄でこそあったが、田舎に居た時の細身の竜崎しか美奈子は知らない。
 美奈子は湿らせた自分のハンカチで竜崎の額に浮き出る汗を拭いながら、自分の知らない竜崎がそこに居る事を、少し悲しく思えた。
「いけない、お医者さんを呼ばないと……」
 気が動転して、そんな事にも気付かない自分を恥ながら美奈子が立ち上がろうとした時、竜崎の意識が戻った。
「……美奈子」
「達也さん! 気が付いたのね?
 待っててください、今、お医者さんを呼んで来ますから!」
 大家に電話を借りようと立ち上がる美奈子の手を掴み、竜崎が引き止める。
「……医者はいい……医者はいいんだ」
「でも……」
 真剣で、それでいて悲しそうな彼の瞳を見て、美奈子は竜崎の枕元に座った。
「……美奈子……どうして来た……」
「だって、心配だったから」
「帰れ……」
 竜崎の言葉に、美奈子は目に涙を溜めた。
「そんな……突然連絡が無くなったから、心配して来たんですよ」
 竜崎は両肘を付き、上体を布団から起こした。
「そうか……迷惑を掛けてすまなかったな……
 でも、もう帰ってくれ」
「どうしてですか? 連絡もせずに、勝手に来た事は謝ります。
 でも連絡を取ろうにも、達也さん、何処に居るのかわからなかったから……
 それなのに会えた途端に帰れだなんて、私、どうしていいかわかりません……」
 二人の間に沈黙が流れる。
 涙を溜めた美奈子が訊ねた。
「私の事、嫌いになられたのですか?」
 一拍の間を置いて、竜崎が答える。 
「……そうだ」
 美奈子の目から涙が溢れた。
「嘘です! そんな見え透いた嘘、私にだってわかります!
 だって、二人で撮った写真をあんなに大切にしてくれているじゃありませんか!?」
「それは……」
「何で私の事をそんなに避けようとするんですか? 何かあったんですか?
 理由を教えて下さい!」
「俺と居ると、お前を不幸にしてしまう……」
 涙を流し訴える美奈子から目を逸らす竜崎。
「私は平気です。
 どんな苦労があっても、達也さんと一緒に居られるだけで幸せですから——」
 言葉を被せるように竜崎が声を上げる!
「そういう話じゃ無いんだ!!」
 竜崎のあまりの声の大きさに、びくりとする美奈子。
 しかし、気丈にも言葉を返し続ける。
「達也さんに何があったのかわかりません……でも、私の気持ちは変わらない昔のままです。
 ずっとずっと、あなたに付いて行きます。だから……」
「だまれ!!!」
 竜崎は思わず美奈子の頬を平手打ちしてしまった。
 美奈子の長い黒髪が揺れる。
 二人の間の時が止まった。

「達也さん、こんな事をする人じゃなかった……」
 美奈子がぶたれた頬を押さえ、涙を流す。
「そうだ。俺は変わっちまったんだ……だから、俺の事なんか忘れて、早く帰れ」
 平手を張った竜崎もまた、うつむいてしまう。
「嫌です、帰りません! せっかく達也さんと会えたのに……わたし、私……」
「俺はもう変わっちまったんだよ! 昔の俺じゃ無いんだ!! 帰れ!」
 竜崎はうつむきながらそう怒鳴ると、歯を食い縛りながら搾り出すように呟いた。
「そうさ……俺はもう変わっちまったんだ……」
 うつむいている竜崎の目から、何かが落ちた。
「達也さん……?」
 それに気付いた美奈子がそっと竜崎の肩に手を伸ばす。
 竜崎が顔を上げる。
 その頬には涙が流れていた。
「……美奈子ぉ……俺、変わっちまったのかなぁ……?」
 肩に伸びた美奈子の手を握り締め、顔をくしゃくしゃにして竜崎が問い掛ける。
「俺、おかしくなっちまったのかなぁ?
 ……美奈子ぉ……俺は、俺だよなぁ?」
 何かに苦悩しているかのような竜崎の問い掛けに、美奈子はようやく竜崎の本意を知った気がした。
 自分を巻き込みたく無いのだ。
 いったい彼の身に何が起きているのか、美奈子には想像もつかない。
 しかし美奈子にまで危険が及ぶような何かが、竜崎の身の上に起きている事だけは理解出来た。
 それでも美奈子は優しく答える。
「達也さん。あなたは昔のままの、私が知ってる達也さんですよ」
 どんな不安に取り憑かれているのだろう?
 この人がこんなにも取り乱す不安を、できることなら取り除いてあげたい。
 美奈子は涙を流し嗚咽する竜崎を包むように抱きしめる。
「俺は……俺でいいんだよな……?」
「そうですよ。あなたは、あなたですよ」
 その言葉に、竜崎は泣きながら子供のように美奈子にしがみつく。
「美奈子ぉ……!」
 美奈子は幼い子供をあやすように、竜崎の頭を優しく何度も撫でる。
 そして、竜崎の強い力で布団に押し倒された美奈子は、そっと目を閉じた。

To be continued.

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